【健康・美容飲料】酵素飲料が市場牽引、美容系は商品形態に変化
飲料受託メーカーへの調査によると、2015年の健康・美容飲料市場では、引き続き国内・輸出向けの酵素飲料が好調をキープ。大型瓶の充填が可能な受託企業の多くが恩恵を受けた。一方、美容系ミニドリンクのブーム終息に伴い、小型瓶中心の受託企業は苦戦。美容系飲料は最近、小型瓶からパウチや三方シールに形態を変える動きも見られ、その対応の可否で受託企業間で業況の二極化が進んでいる。ここでは、健康・美容飲料市場の最新動向をレポートする。
受託企業間で、業況二極化の傾向
健康食品業界で飲料製品が定着する中、今回本紙編集部が健康・美容飲料の受託メーカーに実施した調査(有効回答25社)では、2015年に増収を達成した企業は56%で前回調査より5 ポイント上昇した。経営状況を聞いた調査でも「非常に良かった」「良かった」を合わせると37%で、前回調査を2 ポイント上回っている。数字だけ見れば、美容系ミニドリンクのブーム終息と消費増税に苦しめられた2014年と比較すると、飲料市場は回復しているように思われる。ただ今回の取材およびアンケートから見えてきたのは受託企業間での二極化だ。
2015年の市場は、ここ数年来の酵素飲料ブームを受け、500mLや720mLの大型瓶の充填が可能な受託企業は概ね増収と回答。逆に50mL瓶を主体とするミニドリンク中心の受託企業は、横ばいから減収のところが多く、コラーゲンブームの反動から抜け出せずにいる。とはいえ、受注件数が伸びている商品カテゴリーは今回も「美容・美肌」が断トツ。過去5 年以上もトップを維持している。人気受注素材でも、今回初めて酵素にトップを譲ったものの、コラーゲンは1 票差の2 位、プラセンタは3 位と、美容系飲料の需要が落ちているようには思えない。
実際、大手・有力受託メーカーへの取材では、コラーゲンやプラセンタなど美容系ミニドリンクは、売れ筋商品を残して淘汰が進んでいるものの、残った商品は安定して売れている点、尖閣や放射線問題で止まっていた中国輸出が再開している点、アジア・欧米市場でニーズが拡大している点―― などもあって、全体的には復調傾向にあることが分かった。
一方で今回、パウチのドリンクやゼリー飲料、三方シールの液体・ゼリーに対応できる受託メーカーの多くが増収と回答しており、美容系飲料の商品形態に変化が見られていることがうかがえた。今回の取材でも「ブーム時の商品上市ラッシュで小型瓶の価格イメージが定着し、高額商品として販売し辛い環境にある中、消費増税を機に大型瓶で価格を上げるリニューアルを行う取引先が複数あった」「人手不足で物流コストが上がっており、重量のある瓶からパウチ系、三方シールに需要が移っている」とのコメントが聞かれた。
また剤形への対応だけでなく、営業戦略によっても企業間で差が見られる。例えば中国市場の復調を筆頭に海外市場での日本製健康・美容飲料のニーズが高まる中、海外企業との直接取引を増やしている企業、企画提案型OEMやODMに注力する企業の多くは増収を達成している。健康・美容飲料の市場では今後、求められる工場か否かを巡る競争が、ますます激しさを増すことが予想される。
機能性表示食品、起爆剤となるか?
2016年の健康・美容飲料市場については、4 割の受託企業が経営見通しは「良くなる」と回答。増収を見込む企業は6 割と、前回調査よりそれぞれ10ポイント減少。引き続き、市場環境は厳しいと予想する企業が多い。こうした中、注目されるのが「機能性表示食品」の動向だ。今月8 日現在で214品目が受理されている中、飲料形態は44品目。茶系や乳酸菌系飲料、ノンアルコールビールなどが中心だが、ヒアルロン酸やアスタキサンチンを配合したサプリメント系飲料も受理されている。今回の調査では、機能性表示食品の受注状況について「受注が増えている」との回答は12%、「受注はまだないが問い合わせは増えている」は38%と、半数の受託企業が機能性表示食品に対する引き合いを得ていることが分かった。また機能性表示食品制度が飲料市場に与える影響について聞いた調査では、「市場拡大が期待できる」との回答が46%、「市場拡大は期待できない」との回答は8 %に留まった。
期待できると回答した企業からは、「機能性表示により消費者の購買意欲が高まる」「DgSなどに商品が増えれば消費者も購入するようになる」「飲料はその他加工食品に該当するため、まだまだ拡大傾向が期待できる」といったコメントが聞かれた。ある大手受託企業では、届出中の数品目の製造を受託していると回答。小瓶入りのいわゆるサプリメント系飲料とのことで、今後ミニドリンクタイプの機能性表示食品の上市ラッシュを匂わせる。
こうした動きを受け、原料サプライヤー各社でも、既に機能性表示食品として受理実績のある素材を供給する企業、研究レビュー実施済みの素材を提案する企業など、機能性表示食品に対応できる飲料素材の提案を強化している。
いずれにせよ機能性表示食品制度が飲料市場に与える影響がはっきりする上でも、今期の動向が注目される。
健康産業新聞1590号(2016.02.17)より一部抜粋
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